漢方治療について
東洋医学と西洋医学は、もともとの考え方や理論が違いますので、体のどこに原因があるといったような、考え方はしません。
西洋医学のような、『木をみて森をみずの治療』では、全体がみえず、いつまでたっても細かな症状を追いかけることになりがちです。漢方は全身治療です。
一番、気になる症状に焦点をあてますが、その症状だけを改善するように考えません。
人間の身体は本来、健康を保つ機能を備えていて、その機能は、さまざまな東洋医学的要素のバランスの崩れによって、不快な病気や症状をひきおこします漢方治療とは、このバランスの崩れを整えることによって、本来の健康になろ
うとする、あなたの自然治癒力を最大限にひきだします。
自然治癒力は、あなたが気にしている症状だけを治すのではなく、全身の症状を整えていくのです。あなたの症状や病気を治す力は、あなた自身がもっているのです。
病院で診断していただける病名は、漢方で参考にはしますが、漢方診断に直接関係ありません。
バランスの崩れというのは、おひとり、おひとり、違います
例えば、同じ、『頭痛』といった症状で悩まれていても、東洋医学的に、みると、おひとり、おひとり、証(体質)や適している漢方薬が異なります。
漢方でも西洋医学のように診断が必要です。
症状だけをあてはめればいいとお考えの方もいらっしゃるようですが、深い知識があれば症状だけでは、類似の漢方薬がたくさんあって、どれからためせばいいのか迷うはずです。
漢方本来の治療とは症状や見た目や話し方、性格などを分析データとし、六経・八綱・気血水・五臓・八法・標本・配剤・病因・衛気営血と三焦病証・中医学的症候などを診断基準として分析し、漢方診断します。
これらを網羅し、分析すれば、おのずと気をつけるべき食べ物や環境、そしてあなたにあわせた養生や考え方がわかり、今後の治療方針も決まるのです。
症状だけの漢方薬選びは当ればラッキー
はずれれば、また初めからやり直しと競馬などの博打と変わりません。
また漢方薬ごとに決まった副作用はありませんが、御身体にあっていなければ、
副作用となります。
例えば、以前に一度、ある漢方薬で病気が治ったとしましょう。
年月が経過し、違う病能で漢方薬を飲もうと思った際に以前と体質が変わって
いた場合、以前と同じ漢方薬で今回は副作用のような症状が出ることもあるのです。
これを漢方では、誤治とよびます。
またその副作用を無視して、飲み続けるとバランスの崩れた悪い体質に変わってしまうこともあります。これを漢方で壊病といいます。
壊病になると初めの体質から更にこじれているため、次回に治療する際は難しくなります。
ですから、症状だけの博打で選ばれる場合、長期間の服用はおすすめできません。
ところが、ここでまた1つ難しい問題があります。
漢方治療では、かならずしも、あたなが一番、気にしている症状からよくなら
ないこともあるのです。
例えば、下痢。漢方の治法の中には下とよばれる治療法があります。
つまり、下痢させることによって、身体を快方に向かわせるのです。
一般に下痢はよくない症状となっています。
ですから、診断なき漢方薬を飲まれている場合、この下痢がよい兆候で続けるべきなのか? 即座にやめて漢方薬を変えるべきなのか? 決定する手立てがありません。
またこの兆候で一番厄介なのは、【ちょっとだけよくなる】です。
漢方薬の種類によっては、ゆっくりと改善されるものもありますし、はやく改善されるものもあります。
ですからちょっとだけしかよくならないからといってやめてしまってもダメな
場合もあれば、即座にやめて漢方薬を変えるべき場合もあるのです。
このように反応によっていろいろと変更していく場合、どうしても初めの診断
結果と治療方針がないと1ヶ月で治らなかった場合にもう手がなくなってしまうのです。
この時点で知識が不足している方によっては、漢方薬は穏やかで効かないといった誤解が生まれます。
また漢方の治療は、あなたが一番、気になる症状がなくなればやめていいものではありません。
症状を抑えるのではなく、再発しなくなる体質になることが目標ですので、全身の症状やバランスが整ってきたかを見極めていくことが大切です。
- 漢方薬は症状だけをあてはめて選ぶものではありません。
- 漢方薬を選ぶ前に東洋医学的診断結果が必要です。(西洋医学の生理学や解剖学などを通して診断しません。)
- 思っている症状がすぐによくなってくるとは限りません。
- 漢方薬があっていないと副作用の様な症状をおこします。
- 症状を抑える治療ではなく再発しない身体づくりが目的です。